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議会報告

第392回(令和7年6月23日)定例会 一般質問

1.広域災害における避難所確保や備蓄配備等について

Q.広域災害の発生も想定し、市町が担う避難所確保や備蓄配備等を支援するために県はどう取り組んでいくのか。

A.中村時広 知事

県では、災害発生に備えまして、自主防災組織や防災士が中心となった避難所・避難経路の確認、7日分の水・食料等の確保をあらゆる訓練や防災イベントにおいて県民の皆さんに呼びかけるなど、自助と共助の意識啓発に取り組むほか、20市町と災害時相互応援協定を締結しまして、被災市町で不足する資機材や生活必需物資、避難所の確保について広域的に支援をしているところでございます。これらの取組に加えまして、能登半島地震で課題が顕在化した広域避難に備えまして、受入れ可能なホテル等のデータベースを作成したほか、在宅避難など多様な避難への対応について検討を進めております。備蓄物資についても、市町の現物備蓄を補完するため、民間事業者との災害時応援協定による流通備蓄の確保を図るとともに、県がモデル的に整備させていただきましたトイレカー、水循環型のシャワー・手洗い機などについて、市町での導入が広がるよう働きかけを続けているところでございます。今後は、国が今年度中に策定する広域避難マニュアルを踏まえ、市町や関係機関と連携し、地域の実情に応じた広域避難の方針を作成するとともに、道の駅を含めた車中泊スペースの確保に取り組む市町を支援するほか、今月国が開始しましたトイレカーやキッチンカー、キャンピングカー等の災害対応車両登録制度を広く周知するなど、引き続きオール愛媛による防災体制の強化に取り組んでまいりたいと思います。

2.メタバースを活用した出会いの場創出事業について

Q.メタバースを活用した出会いの場創出に向けて、今後、どのように取り組んでいくのか。

A.森居基修 人口減少対策統括部長

様々な制限や制約を受けたコロナ禍では、若者の交流機会が大きく減少したことから、県では、自宅にいながらイベントやお見合いに参加できるオンライン婚活を導入するなど、生活様式や意識の変化を踏まえながら出会いの場の創出に取り組んでおり、昨年度からは、メタバースを活用した婚活支援を開始したところでございます。アバターと呼ばれる分身を使い、チャットや音声で交流するメタバースは、会場が遠い、容姿等で判断されたくないなど、これまで物理的・心理的なハードルからリアルでのイベントを敬遠してきた若者からも参加が期待でき、実際に昨年度の参加者44名からは、顔が見えない分緊張せずに会話ができた、価値観など内面を知ることができよかったといった好意的な感想が多く寄せられ、連絡先の交換率も8割を超えるなど、新たな婚活ツールとして手応えや可能性を実感したところでございます。今年度は、場所や時間にとらわれず、内面重視の出会いができるメタバースのメリットを生かしつつ、その後の交流にもつながるようリアルの交流会とコラボしたハイブリッド型イベントを開催するほか、新たに市町の出会い事業との連携も図ることとしており、引き続き、愛媛での結婚を希望する若者の参加を広く募り、メタバースをはじめとした多様な出会いの場づくりにしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

3.発達障がいの方の就労に向けた支援について

Q.発達障がいの方の就労に向けた支援についてどのように取り組んでいるのか。

A.岡部 保健福祉部長

発達障がいの方が自立した社会生活を送るためには、能力を十分に発揮できる環境づくりが重要でありますことから、県では、就学や就労など各ライフステージを通じて切れ目のない地域の相談支援体制を充実するほか、特に就労や自立の場面では、本人はもとより周囲の方や雇用する企業等の障がいに対する理解を深めるとともに、その特性に応じたサポート体制の構築に取り組んでいるところでございます。具体的には、発達障がい者支援センターにおきまして、発達障がいの方や家族からの就労も含めた相談に応じ、適切な助言等を行いますとともに、身近な地域で支援が受けられるよう全市町にワンストップ相談体制を構築しているところでございます。また、今年度からは、発達障がい者支援センターの地域支援マネージャーを増員し、新たに各市町への巡回相談を開始しており、市町が抱える対応困難事例への支援などにより、相談支援体制の一層の充実・強化を図っているところでございます。さらに、障がい者に対する職業訓練やマッチング支援、就労先企業の開拓を進めておりますほか、企業等に対して合理的配慮の必要性を啓発するセミナーを開催するとともに、障がい者の職場適応や定着に向けた助言を行うなど、障がい者と企業等との相互理解を促進しているところでございます。今後とも、関係機関と連携し、発達障がい者の方がその特性に応じた働き方ができる環境づくりに取り組んでまいりたいと考えております。

4.観光振興における四国協同について

Q.四国のインバウンド観光の振興に向けて四国4県が連携の下、どのように取り組んでいくのか。

A.久保田 観光スポーツ文化部長

広域連携による観光振興は、旅行日数が長く複数の都道府県を周遊する欧米豪市場等での認知度向上や誘客促進に極めて効果的であり、令和5年に策定した第3期愛媛県観光振興基本計画におきましても、四国4県連携による海外誘客を施策の一つに掲げて事業展開しているところでございます。具体的には、4県等で構成する四国ツーリズム創造機構を主体に、海外旅行博や商談会に参加するとともに、旅行会社等42社を招請した視察ツアーにより、27件の商品造成に結びつけたほか、今年度は、新たに万博を好機と捉えた大阪での情報発信や四国の祭りに焦点を当てた動画の制作・配信に取り組むこととしております。また、4県の協議会を主体といたしまして、四国遍路では、世界遺産登録に向けた普及啓発や遍路道などの受入れ態勢整備を図るほか、四国一周サイクリングでは、ルートの環境整備や民間団体と連携したPRにより、昨年度は、海外から過去最高の4ツアー62人が来県するなど、認知度の高まりを実感しているところでございます。県といたしましては、歴史や文化等を生かした体験型コンテンツの磨き上げや、Airbnbとの協定に基づく多様な宿泊施設の確保など、独自の施策展開により海外への訴求力を高めつつ、4県連携の下、四国を一つのコンテンツとした高付加価値化や積極的なプロモーションに努め、海外からの誘客促進と消費額向上を図り、地域経済の活性化につなげてまいりたいと考えております。

5.産業人材の育成・確保に向けた産学官の結びつきについて

Q.本県、特に東予地域における産業を支える人材の育成・確保に向け、産学官が協力の下、どのように取り組んでいくのか。

A.中村時広 知事

県では、多彩な工業都市が連なり、日本屈指の高い技術力を持つものづくり企業が集積し、県内経済を牽引している東予地域を含め、各地域の産業が持続的に発展できるよう、ものづくり産業・サービス産業振興指針を策定し、その柱の一つに、愛媛の未来を支える産業人材の育成・確保を位置づけて、産学官が連携した取組を進めております。具体的には、産学官で運営するジョブカフェ愛workでは、学生を対象とする県内企業の紹介やマッチング支援に加え、昨年度は東予の13の高校で出前講座も開催するとともに、東予の産業技術専門校では産業界のニーズを反映した職業訓練を実施するほか、東予東部3市と新居浜工業高等専門学校、経済団体が連携して、ものづくり企業の人材確保を進めているところでございます。また、デジタル分野では、県内4つの大学と連携した情報学部等の創設に加え、IT企業や大学等で構成する県デジタル人材育成推進会議を推進基盤とし、即戦力となる人材の育成を支援しているところでございます。さらに、全国に誇る紙産業の維持・発展を目指すべく、県紙産業技術センターを核にして、大学や企業と連携した新技術の研究開発や研修会による技術者の育成にも取り組んでいるところでございます。今後とも、産学官の連携を一層強化し、世界経済が不透明な中にあっても、おのおのの強みと力を結集して地域産業を支えるとともに、県内企業が求める人材の育成・確保へとつなげてまいりたいと思います。

6.森林環境の保全について

Q.来年、本県において全国植樹祭の開催が控える中、県として、森林環境の保全や森林と共生する文化の創造にどう取り組んでいかれるのか。

A.久保圭一朗 農林水産部長

県民共有の財産である森林を健全な形で次世代に引き継ぐためには、木材の需要拡大や施業の効率化などにより、林業・木材産業を将来にわたり持続可能な産業として成長させる取組と併せて、伐って、植えて、育てる森林資源循環の大切さを県民一人一人が理解し、森林を守り育て、共に生きるという思いを共有することが重要であると考えております。このため県では、森林と共生する文化の創造に向けたえひめ山の日の制定をはじめ、森林環境税を活用した県民からの公募事業の実施や、触れ合い活動の拠点であるえひめ森林公園の魅力向上に加え、小中学生を対象とした林業教室等の開催や緑の少年団の育成、企業やボランティア団体等が行う森林保全活動への支援などを通じて、森林との共生意識の醸成に努めているところでございます。さらに、昨日の1年前記念イベントなど、来年春の全国植樹祭を絶好の追い風と捉え、今年度から第5期がスタートした森林環境税を活用した取組におきましても、5年間で250万人の県民参加という高い目標を掲げて、幼児期を含め幅広い世代への森林環境教育や木育等の体験活動の強化など、県民と森との交流促進をオール愛媛体制で加速させることで、森林への親しみとその恩恵への理解を深め、森林と共生する文化がより一層県民生活に浸透していくよう尽力してまいりたいと考えております。

第391回(令和7年3月7日)定例会 一般質問

1.防災士の活躍促進について

Q.防災士の活躍促進に向け、個人のスキルアップや連携体制の構築にどう取り組まれるのか。

A.中村時広 知事

大規模災害時の公助には限界がある中で、特に初動段階で最大の力を発揮するのは地域の支え合いであることから、知事就任以降、地域の防災リーダーとなる防災士について、有事はもとより、平時の訓練等でも幅広く活躍してほしいとの思いで養成に取り組んでまいりました。その結果、昨年10月には公約に掲げておりました防災士数全国1位を達成するに至っております。2月末現在においても県内2万5,974名と全国最多を維持しており、今後は質の向上に向けた支援の強化が重要であると考えております。防災士の活躍促進に向けては、これまで自主防災組織や企業の防災士を対象とした消防学校でのスキルアップ講座や、自主防災組織等の優れた取組を発表・顕彰し、横展開することを目的としたえひめ自主防災フォーラムを開催するほか、防災士同士が地域を越えて情報共有・情報交換を図る連絡調整会等の実施により、防災士活動の活性化や連携体制の強化に取り組んできたところでございます。さらに、生涯にわたり切れ目なく防災に関わってもらえるよう、新たに中高生防災士の養成に取り組むほか、シニア層など資格取得から年数が経過した防災士を対象とした実践的な講座や全防災士向けの動画配信等、学び直しの機会を提供し、さらなる活躍促進につなげていきたいと考えております。今後とも防災士の層の厚さと質の向上により自助・共助の底上げを図り、もって地域防災力の一層の強化に結びつけていくよう努めてまいりたいと思います。

2.県・市町連携の防災対策について

Q.県・市町連携の防災体制の構築に向け、どのように取り組んでいかれるのか。

A.松田交志 防災安全統括部長

災害発生に備え、地域特性の異なる市町が支え合う仕組みを構築しておくことが重要であることから、県・市町連携推進プランにおいて、県と20市町の災害時相互応援協定の締結など、防災・減災対策に関する33項目の連携施策に取り組んでおり、西日本豪雨災害時には、協定に基づき発災当初の膨大な業務に対処するため、市町間カウンターパート方式による迅速な人的支援を行ったところでございます。さらに、チーム愛媛で職員を派遣し避難所支援を行った能登半島地震の経験や課題を踏まえ、県と市町が保有するトイレカーを相互利用できる体制整備に取り組むほか、避難所開設時に特に必要な水や食料、段ボールベッド等について市町の現物備蓄を補完するため、県は、民間事業者との災害時応援協定による流通備蓄の確保を図るなど、被災者の命と健康を守るため、県と市町が協力して避難所生活の環境改善に取り組むこととしております。また、先月の大雪では孤立集落が発生するおそれもあったことから、全市町に対し事前に降雪時の対応について注意喚起を行い、特に降雪量が多い山間部を有する市町に対しては、除雪体制や被害の状況の確認など個別に対応したところでございます。今後とも地域ごとに異なる大雪や豪雨、津波などの発生リスクに留意し、本県の強みであるチーム力を生かしながら県・市町連携による防災体制の強化に取り組んでまいりたいと考えております。

3.サイクリングを活用した滞在型観光の推進について

Q.サイクリングを活用した滞在型観光の推進にどう取り組んでいかれるのか。

A.中村時広 知事

十数年の月日をかけて進捗をしてきた世界有数のサイクリングルートに成長した、しまなみ海道を中心に、県内全域に及ぶ愛媛マルゴト自転車道など、各地域で異なる景観が楽しめ、快適に走行できる強みを生かし、サイクリストのさらなる受入れ環境の充実とともに、サイクリングと魅力的なコンテンツを結びつけた周遊促進や滞在期間の長期化を図ることが重要と考えております。このため、受入れ環境の充実として、体力に関係なく楽しめるE-BIKEの配備、手荷物当日配送サービスの導入、サイクルトレインの運行支援やJR主要駅における自転車整備スペースの設置などに、周遊促進や滞在期間の長期化として既に5,000人以上がチャレンジしている四国一周サイクリングの国内外への積極的な情報発信や、しまなみ海道を起点に数日をかけて自転車で巡る広域スタンプラリーの実施などに取り組んでいるところでございます。来年度は、今年度覚書を締結させていただきましたオーストラリアからの誘客に向け、サイクリングと歴史・文化体験等を組み合わせた商品造成を進めるほか、今後、普及が見込まれるE-マウンテンバイクの導入を促進し、新たな誘客につながるコンテンツを育成することとしています。さらに、令和9年開催が決まりました自転車の国際会議ベロシティでは、欧州等のサイクルツーリズムの知見を習得し、自転車を活用した持続可能な滞在型観光地の形成につなげ、さらなる誘客や県内経済の活性化へと結びつけてまいりたいと思います。

4.林業・木材産業の発展について

Q.林業・木材産業の発展に向け、生産性の高い林業の確立にどう取り組んでいかれるのか。

A.久保圭一朗 農林水産部長

本県の人工林の大半が伐採適齢期を迎える中、豊富な資源を有効に活用して林業・木材産業を活性化するためには、森林を適切に管理し、生産基盤の整備や施業の効率化を図り、収益を確保しながら森林資源の循環利用を加速していくことが重要と認識しております。このため県では、林道や森林作業道の計画的な路網の整備に加え、架線作業システムや高性能林業機械の導入支援を通じて森林施業の生産性向上やコスト低減を図るほか、再造林においては、作業性のよいコンテナ苗や成長の速いエリートツリー等の植栽により、低コスト化を進めているところでございます。また、来年度からは造林作業のさらなる経費節減を目指し、新たに伐採用機械の活用や効率的な下刈り手法の導入などにも取り組みたいと考えており、関係経費を当初予算案に計上しているところでございます。さらに、森林管理の適正化の面では、森林GISを活用して、市町が行う森林所有者の意向調査の円滑化を図り、採算性の高い伐採林の集約化や施業の共同化など収益確保につながる森林整備を進めておりまして、今後とも市町や森林組合、関係団体等とも連携し、川上から川下まで一貫した県産材の生産力の強化と収益性の向上に多面的に取り組み、もうかる林業の実現に向けて力を尽くしてまいりたいと考えております。

5.不登校支援について

Q.県教育委員会は、不登校児童生徒の学びの保障に向けてどう取り組んでいかれるのか。

A.高岡哲也 教育長

不登校の要因や背景が複雑化・多様化する中、県教育委員会では、登校という結果のみを目標とせず、不登校児童生徒が自らの進路を主体的に捉え、興味や関心の幅を広げながら、最終的に社会的自立を目指せるよう、学校内外を問わず安心して学び、社会や他者と交流できる多様な教育環境を確保することが重要であると考えております。このため県教育委員会では、不登校の形態を3つに類型化して対策を講じており、登校できるが教室に入れない場合には、専任教員等を配置した校内サポートルームでの支援を、登校できないがフリースクール等に通える場合には、交通費や体験活動等の経費補助を行うほか、自宅から出られない場合には、仮想空間上の学びの場であるメタサポキャンパスを拠点に現在150名を超える登録者を支援するなど、個々の状況に応じた学びの場と居場所を提供することで社会や他者とのつながりを確保してきたところでございます。来年度は、不登校対策に大きな成果をもたらしている校内サポートルームについて、県モデル校の3校増設と併せ、市町設置校への支援員配置に係る補助経費を当初予算案に計上し、全県下への横展開を視野に支援体制の充実強化を図ることとしており、今後とも市町教育委員会をはじめ関係機関との連携の下、全ての児童生徒が自分の存在感や自己実現の喜びを実感できる学びの場づくりに努めてまいりたいと考えております。

6.介護予防について

Q.介護が必要な人を減らすため、介護予防にどのように取り組んでいかれるのか。

A.菅隆章 保健福祉部長

介護現場での人材不足等が課題となる中、本県では、高齢化率や要支援を含む要介護認定率が全国平均より高く、高齢者が健康寿命を延ばし、介護に頼らず、可能な限り自立した日常生活を送るためには、生涯にわたる健康づくりや生きがいづくりを通じた介護予防の取組が重要であると考えております。介護予防の実施主体である市町では、介護予防教室や講座の開催による普及啓発をはじめ、高齢者が主体的に身近な場所で体操や趣味活動等を行う、通いの場を実施するほか、要支援認定者の状態の改善や重度化の防止に向けて、事業者による通所リハビリ等のサービスが提供されております。また、県では、介護予防従事者のスキルアップ研修を実施するとともに、県が設置する介護予防市町支援検討会の構成員である大学教授等による市町への助言や、理学療法士などリハビリ専門職の通いの場等への派遣などを通じて、市町の取組を支援しているところでございます。さらに、高齢者が自立して様々な社会活動に積極的に参加し、心身の健康の維持・向上を図ることができるよう、生涯学習の機会を提供する高齢者大学校の開催をはじめ、ねんりんピックへの県選手団の派遣や老人クラブ活動の支援に取り組んでおり、今後も引き続き市町等と連携して介護予防の取組を推進し、高齢者が住み慣れた地域において健康で生きがいを持って暮らせる社会づくりに努めてまいりたいと考えております。

第388回(令和6年7月1日)定例会 一般質問

1.防災・減災対策について

Q.大規模災害時の円滑な広域避難体制の確保に向け、市町や関係機関と連携してどう取り組むのか。

A.松田交志 防災安全統括部長

大規模災害時における住民の県内での広域避難に備え、県は、関係団体と災害時応援協定を締結し、避難者の輸送や宿泊施設の提供について定めているほか、市町においては、相互応援協定を結び、一時収容施設の提供により広域避難を支援することとしており、これまでに県と市町との実務者協議会において事例や課題を共有してきたところであります。また、県外への避難が必要な場合に備え、四国、中四国、全国の各レベルの広域応援協定も締結しております。このような中、能登半島地震への被災地支援において、本県は、輪島市からの広域避難に伴う避難者の意向確認やバス輸送支援などの業務に携わり、避難者と受入先とのマッチングの難しさを実感したところであり、広域避難を円滑に実行するためには、平時から市町や関係機関と連携を密にし、ルールづくりを進めておく必要があると考えております。現在、国では、能登半島地震に係る自主点検レポートを取りまとめ、広域避難を行うべき場合や優先的に対象とすべき避難者の考え方をはじめ、各地に避難した住民への支援情報の提供等についてマニュアル整備や制度改正が検討されており、今後、これらを踏まえ、市町や関係機関と連携して地域の実情に合わせた広域避難の方針を検討するなど、円滑な広域避難体制の確保に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

Q.福祉避難所の適切な開設・運営に向け、市町や関係施設をどのように支援していくのか。

A.菅隆章 保健福祉部長

福祉避難所は、高齢者や障がい者、乳幼児など、要配慮者の避難生活を支える重要な拠点でありますことから、県では、福祉避難所マニュアルを作成し、市町等に発災時の円滑な開設や運営方法を周知するほか、市町と連携して指定の拡充に努めており、県内20市町全体で486か所、約2万3,000人の受入れが可能な体制を確保しております。また、物資や人材の不足など、これまでの大規模災害の教訓を踏まえ、介護用トイレ、簡易ベッド等の物資配備や開設訓練など、機能強化に向けた市町の取組を支援するほか、市町や医療・福祉団体等が参画する県災害時福祉支援地域連携協議会を設置し、多職種の専門職で構成する災害時要配慮者支援チームや、必要な人材を平時から確保する災害時福祉人材マッチング制度など、人的支援体制の構築にも取り組んでまいりました。これらの体制は西日本豪雨災害でも機能しましたが、能登半島地震では、初動の遅れに加え、共同生活が困難な方の避難スペースの確保といった課題が顕在化したため、現在、市町に対し運用上の課題について丁寧な聞き取りを行っております。今後も引き続き、市町や福祉施設等のニーズを踏まえながら、要配慮者が安心して避難生活を送ることができる体制づくりを積極的に支援してまいりたいと考えております。

2.防災教育の推進について

Q.地域と連携した防災教育の推進に向け、県内公立学校では今後どのように取り組んでいくのか。

A.田所竜二 教育長

本県では、災害時に児童生徒自らが適切に判断し、主体的に行動できる知識や能力を養えるよう、地域性を踏まえた備えや対応の在り方、発災時の規律ある行動、応急手当の基礎知識など、児童生徒の防災知識を高めるきめ細かなカリキュラムを発達段階に応じて計画的に提供するとともに、より実践的な避難訓練を繰り返し実施するなど、平素より効果的な防災教育の推進に努めております。特に、地形や周辺環境などの地域特性は、防災教育に不可欠な要素でありますことから、県教育委員会では、平成24年度から地域ごとに防災教育研究を実施しており、昨年度は、四国中央市など4市町をモデル地域に指定し、学校と地域防災組織との合同訓練や、防災マップを活用した災害リスクの理解促進など、地域と協働した防災教育に取り組むとともに、県立高校3校を実践モデル校に指定し、災害の歴史をたどるウオークラリーや高齢者宅での防災点検等の探究活動、文化祭と連動させた避難所のモデル設置や防災グッズ体験など、各校が工夫を凝らした取組を実施しながら、生徒の防災力の向上を図っております。今後とも、各校に適正配置した約3,000名の教職員防災士を中核として、学校総ぐるみで児童生徒の防災力向上に努めるとともに、大規模災害に備えた防災教育の充実に地域の力をお借りしながら継続的に取り組んでまいりたいと考えております。

3.中小企業の経営基盤の強化について

Q.現下の県内経済情勢をどう認識し、中小企業の経営基盤の強化をどのように支援していくのか。

A.中村時広 知事

最近の県内経済は、化学あるいは電気機械など、一部の業種における生産活動で弱い動きが見られるものの、個人消費は、エネルギー価格の高騰や円安等による物価上昇の影響を受けつつも徐々に回復し、また、設備投資も運輸や観光業を中心に増加するなど、全体としては緩やかに持ち直していると認識をしています。しかし、ゼロゼロ融資の返済の本格化や、長引く物価高による収益の圧迫、慢性的な人材不足など、県内企業を取り巻く環境は、全体的には依然として厳しい状況が続いています。県では、企業が経済情勢の変化や市場の競争に対応しながら持続的な発展を図るため、金融機関と連携したきめ細かな伴走支援を行っており、約7,000件の資金繰りをサポートしてきたほか、生産性向上・省コスト化につながる設備投資への助成や、デジタル技術の実装推進、営業本部を軸とした国内外への新たな販路拡大、リスキリングによる社内DX人材の育成・確保など、多角的な支援策を展開し、将来を見据えた中小企業の前向きな取組を中心に下支えをしているところでございます。さらに、今後も不透明な情勢が続くと考え、コスト削減による収益力向上に向けた省エネ設備の更新等への支援や、賃上げに資する国の業務改善助成金への上乗せ補助を行うため、必要経費を6月補正予算案に計上しているところであります。引き続き、県内中小企業がより競争力を持ち、安定した経営を続けられるよう、県内経済の動向を注視しつつ、関係団体等とも密に連携しながら、企業の経営基盤強化への取組を支援していきたいというふうに思います。

4.紙産業の振興について

Q.紙産業技術の研究成果はどうか。また、紙産業の振興に今後どのように取り組んでいくのか。

A.中村時広 知事

デジタル化の進展等により、紙製品の国内需要の縮小が避けられない中、本県ものづくり産業の基幹を担う紙産業の振興に向けては、カーボンニュートラルやSDGsなど、社会経済情勢の変化に対応しつつ、紙製品への新たな付加価値を創出することは不可欠であり、県紙産業技術センターを核として、大学や民間企業と連携しながら、新技術の研究開発に注力してきているところでございます。具体的には、紙くずやタオルくず等の産業廃棄物を活用し、機能的な再生紙を開発したほか、次世代の高機能素材として期待されるセルロースナノファイバー関連技術では、CNFを配合した抗菌段ボール資材や掃除用ウエットシート、新しい脱水技術を取り入れたCNFシート製造装置等の製品化に結びついたところであります。また、温暖化の影響により注目されている冷たくて蒸れない冷感紙の開発にも取り組んでおり、冷感性や吸水性が向上した試作に成功するなど、現在、製品化に向け研究を加速させているところであります。加えて、古紙の新たな用途開拓として、脱プラスチックに対応可能な代替製品開発に向けた研究を行うなど、従来の紙製品の枠を超えた新分野を目指す取組も進めており、今後とも、市場や企業ニーズを的確に捉えて、産学官による連携を一層強化し、全国に誇る紙産業の維持・発展と本県経済の活性化につながるよう、積極果敢に取り組んでまいりたいと思います。

5.県立高校の魅力向上について

Q.県立高校の魅力向上に向け、今後どのように取り組んでいくのか。

A.田所竜二 教育長

昨年3月に策定した県立学校振興計画は、県立高校等の魅力化を図りながら、質の高い学びを全県域で提供できる体制の構築を目指し、夢や進路の実現を目指す子供たちから第一の進学先として選ばれるよう、多彩で魅力的な選択肢の提供、職業・学科横断的学習の展開、進学指導の充実という3つの目標の実現に取り組んでおります。具体的には、理数情報科や国際科、ゲームクリエーションコースなど、新しい学科・コース等のカリキュラムづくりや環境整備、職業横断型人材育成のための学習モデル構築と教材開発、進学型総合学科など、地元高校から第1希望の大学等に進学できる指導体制の強化などに取り組んでおり、来春から始まる計画の具体化に向け、施設・設備の整備はもとより、準備委員会を軸に各校が教育内容のブラッシュアップを急ピッチで進めているところでございます。また、昨年度から全ての県立学校で実施しているソーシャルチャレンジ for High School 事業では、地域の企業や団体・大学等と連携し、地場産業の振興やにぎわい創出など、地域課題の解決に向けた実践的な活動を通して、生徒の地域への愛着や貢献意欲を喚起しており、今後は、ふるさと納税の活用など、先進事例も研究しながら、地域に愛され生徒に選ばれ続ける魅力ある学校づくりに、引き続き全力で取り組んでまいりたいと考えております。

6.特別支援学校における就労支援について

Q.特別支援学校における就労支援に今後どのように取り組んでいくのか。

A.田所竜二 教育長

障がいがある子供たちの自立と社会参加を促進するためには、就労支援の強化が極めて重要と認識しており、特別支援学校では、障がいの状態や発達段階に応じたキャリア教育を幼児段階から計画的に実践するとともに、企業や関係機関と緊密に連携し、個々の生徒の能力・適性に応じたきめ細かな就労支援を行っております。特に、清掃、接客、販売実務、情報の4部門で実施する県の技能検定は、国の障がい者雇用促進セミナーと同時開催することで、生徒の能力や意欲を企業関係者にアピールできており、昨年度の検定1級取得者の約8割は希望職種に就労するなど、着実に成果を上げているほか、東・中・南予に配置する就労支援コーディネーターを軸として、就労先の新規開拓やマッチング、職場定着に向けたフォローアップなど、切れ目のない支援にも努めております。また、ICT機器の授業活用を積極的に進める中で、ロボットの遠隔操作による接客業務や、在宅でのビジネス文書作成業務に挑戦する生徒も現れるなど、デジタル社会の進展が職業選択の幅を広げていく可能性を実感しており、今後とも、社会環境の変化に応じた効果的なキャリア教育を積極的に推進し、1人でも多くの生徒が希望する進路実現を果たせるよう、関係機関等とより連携を密にしながら、支援の充実を図ってまいりたいと考えております。

第385回(令和5年9月21日)定例会 一般質問

1.自治体間の広域支援体制の充実強化について

Q.県内市町間や近隣県との連携強化など、災害時の広域支援体制の充実強化にどう取り組んでいるのか。

A.中村時広 知事

大規模災害の発生直後、避難所運営や災害廃棄物処理、罹災証明発行等を被災自治体のみで対処するには限界があることから、迅速かつ適切に実施するため、県内市町間に加え、四国や中四国、全国レベルでの都道府県間の広域支援体制を構築し、災害発生時に相互応援をこれまでも行ってきたところ。西日本豪雨災害でも、南予4市町に対して、県内12市町、県外は9都県から延べ6千人を超える行政職員の応援を受け、災害応急対策や生活再建に尽力いただき、広域支援の重要性を認識。このため、その後の支援マニュアル等の見直しや研修会等によるスキルアップに加え、県総合防災訓練ではカウンターパート先である他県や市町に毎年参加いただき、共に実践を重ねるなど、広域支援の更なる実効性向上に努めている。また、災害マネジメント力を向上させるため、市町災害対策本部の支援や防災機関との調整等を行う支援員を、県・市町の防災担当者を中心に、これまで68名養成。昨年12月の雪害時には久万高原町に支援員を派遣し、町長等へ直接助言して、派遣部隊と自衛隊の活動箇所等を調整したことが除雪等の迅速化に繋がるなど効果を発揮している。今後とも激甚化する大規模災害に万全を期すため、訓練等を通じ自治体間の連携に努め、広域支援体制の充実強化に今後も取り組んで参りたい。

2.林業の支援について

Q.現在の県内のJ-クレジット取得事業者の状況と今後の見通しはどうか。また、J-クレジット取得に向けた取組みはどうか。

A.末永洋一 農林水産部長

森林管理により吸収されたCO2を認証し、販売するJクレジット制度は、SDGsの目標達成に貢献するもので、県内では、3つの森林組合と西予市で合計8,781トンがクレジット化され、うち2,106トンの販売収益が森林整備に活用されているほか、石油元売り会社と協定を締結した久万高原町では今後の取引が見込まれている。この制度は、森林吸収量を価値化して現場に還元できる反面、登録審査に多大な労力を要することが課題であったことから、国では認証対象期間や算定対象などの要件を緩和し制度の活用を促しており、全国的な需要の高まりと相まって取引の広がりが期待できると認識。このため県では、登録に必要な間伐等の施業履歴の把握や森林経営計画の策定を効率的に行うための航空レーザによる計測データの活用、森林組合等が行う森林整備への支援等を行ってきたほか、今年度から新たに、購入者とのマッチング支援や創出者の意欲を喚起するセミナーの開催にも取り組んでおり、今後とも、森林の機能を活用した森林整備のための資金獲得を促進し、持続可能な森林経営と林業の活性化につなげてまいりたい。

Q.林業従事者の確保にどのように取り組むのか。

A.中村時広 知事

林業従事者が減少傾向にある中で、森林の適切な管理と資源の循環利用を図り、災害防止や水源涵養など森林の持つ多面的機能を発揮させるためには、これまでに培われてきた林業従事者の優れた技術や経験を、将来に渡り継承できる担い手の確保・育成が喫緊の課題である。このため県では、高校生等の体験研修や就業相談会の開催をはじめ、就業給付金の支給や林業研究センターでの各種技術研修を実施し、新規就業とその定着を図るとともに、作業の効率化や労働負荷の軽減等を図るため、高性能機械や安全装備等の導入を支援するほか、今年度から、急速な進化が続くデジタル技術を活用したスマート林業を実践できる人材の育成にも着手したところ。また、林業のすばらしい魅力を理解いただくため、「えひめ愛顔の農林水産人」や林業女子会「林凜ガール」の活躍を広く情報発信するとともに、外国人材活用のための制度改正を国に提案するなど、林業のイメージアップや多様な人材の確保にも取り組んでおり、今後とも関係団体や林業事業体と連携しながら、就業意欲の醸成と定着に至るまでの研修などを通して林業従事者の確保・育成に努め、持続可能な林業の実現につなげてまいりたい。

3.活力ある地域づくりについて

Q.活力ある地域づくりに向けて、地域活動を行うNPO法人の活性化にどのように取り組んでいるのか。

A.池田貴子 県民環境部長

人口減少や少子高齢化など社会構造の変化等による地域活力の低下が危惧される中、NPO法人は、多様化する社会ニーズに応えることが期待され、県内では8月末現在510法人が福祉や防災、教育など様々な分野で主体的に活動しており、個性ある地域づくりや地域課題解決の担い手として重要な存在であると考えている。このため、県では、魅力ある地域の基盤づくり等のため、地域課題解決を担うNPO法人の確保を掲げ、これまで、設立・運営相談や助言・指導、愛媛ボランティアネットを活用した制度の普及啓発などのほか、あったか愛媛NPO応援基金を活用した助成事業や運営能力向上のための研修会の開催等により、育成・支援の両面から法人活動の活性化に取り組んできたところ。今年度も、NPO法人が地縁団体や地元自治体と協働して移住者獲得を目指す取組みや歴史・文化の伝承活動など、地域に根差した活動を支援するとともに、来月には、団体相互で連携・協力するネットワークづくりの推進を図るセミナーを開催することとしており、引き続き、NPO法人の一層の活性化を図り、多様な主体が協働した活力ある地域づくりに取り組んでまいりたい。

4.高校の魅力向上について

Q.小中学校でICT教育を受け、知識や技能が高まった子どもたちの進学先についてどう考え、どう取り組んでいくのか。

A.教育長

県教委では、令和2年度に小学校から高校までを見通したICT教育3か年計画を策定し、児童生徒の発達段階に応じた情報教育を計画的に実施しており、高校段階では、今年度から全ての県立高校等でプログラミング学習アプリを試験導入し学習レベルの底上げを図るほか、プログラミングのスキルアップを目的としたサマースクールやコンテスト等を開催するなど、より高度な学習内容を希求する生徒への取組みも拡充している。また、本年3月に策定した県立学校振興計画においては、理数情報科や情報マネジメント系列など、情報教育に重点を置いた学科等を東中南予に各2校ずつ設置することとし、より高度な情報教育を希望する生徒が、地域内の高校で学びながら第一希望の進路実現が可能となるような体制づくりも進めており、県のDX実行プランに呼応してデジタル人材の育成に取り組む県内の大学や企業との連携を強化しながら、情報関連分野への進学・就職を目指すカリキュラム等の検討を進めている。県教委では現在、第2期3か年計画の策定を進めており、引き続き小中高各段階での情報教育の連関を重視しながら、一貫性のある教育実践に取り組んで参りたい。