議会報告
第388回(令和6年7月1日)定例会 一般質問
1.防災・減災対策について
Q.大規模災害時の円滑な広域避難体制の確保に向け、市町や関係機関と連携してどう取り組むのか。
A.松田交志 防災安全統括部長
大規模災害時における住民の県内での広域避難に備え、県は、関係団体と災害時応援協定を締結し、避難者の輸送や宿泊施設の提供について定めているほか、市町においては、相互応援協定を結び、一時収容施設の提供により広域避難を支援することとしており、これまでに県と市町との実務者協議会において事例や課題を共有してきたところであります。また、県外への避難が必要な場合に備え、四国、中四国、全国の各レベルの広域応援協定も締結しております。このような中、能登半島地震への被災地支援において、本県は、輪島市からの広域避難に伴う避難者の意向確認やバス輸送支援などの業務に携わり、避難者と受入先とのマッチングの難しさを実感したところであり、広域避難を円滑に実行するためには、平時から市町や関係機関と連携を密にし、ルールづくりを進めておく必要があると考えております。現在、国では、能登半島地震に係る自主点検レポートを取りまとめ、広域避難を行うべき場合や優先的に対象とすべき避難者の考え方をはじめ、各地に避難した住民への支援情報の提供等についてマニュアル整備や制度改正が検討されており、今後、これらを踏まえ、市町や関係機関と連携して地域の実情に合わせた広域避難の方針を検討するなど、円滑な広域避難体制の確保に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
Q.福祉避難所の適切な開設・運営に向け、市町や関係施設をどのように支援していくのか。
A.菅隆章 保健福祉部長
福祉避難所は、高齢者や障がい者、乳幼児など、要配慮者の避難生活を支える重要な拠点でありますことから、県では、福祉避難所マニュアルを作成し、市町等に発災時の円滑な開設や運営方法を周知するほか、市町と連携して指定の拡充に努めており、県内20市町全体で486か所、約2万3,000人の受入れが可能な体制を確保しております。また、物資や人材の不足など、これまでの大規模災害の教訓を踏まえ、介護用トイレ、簡易ベッド等の物資配備や開設訓練など、機能強化に向けた市町の取組を支援するほか、市町や医療・福祉団体等が参画する県災害時福祉支援地域連携協議会を設置し、多職種の専門職で構成する災害時要配慮者支援チームや、必要な人材を平時から確保する災害時福祉人材マッチング制度など、人的支援体制の構築にも取り組んでまいりました。これらの体制は西日本豪雨災害でも機能しましたが、能登半島地震では、初動の遅れに加え、共同生活が困難な方の避難スペースの確保といった課題が顕在化したため、現在、市町に対し運用上の課題について丁寧な聞き取りを行っております。今後も引き続き、市町や福祉施設等のニーズを踏まえながら、要配慮者が安心して避難生活を送ることができる体制づくりを積極的に支援してまいりたいと考えております。
2.防災教育の推進について
Q.地域と連携した防災教育の推進に向け、県内公立学校では今後どのように取り組んでいくのか。
A.田所竜二 教育長
本県では、災害時に児童生徒自らが適切に判断し、主体的に行動できる知識や能力を養えるよう、地域性を踏まえた備えや対応の在り方、発災時の規律ある行動、応急手当の基礎知識など、児童生徒の防災知識を高めるきめ細かなカリキュラムを発達段階に応じて計画的に提供するとともに、より実践的な避難訓練を繰り返し実施するなど、平素より効果的な防災教育の推進に努めております。特に、地形や周辺環境などの地域特性は、防災教育に不可欠な要素でありますことから、県教育委員会では、平成24年度から地域ごとに防災教育研究を実施しており、昨年度は、四国中央市など4市町をモデル地域に指定し、学校と地域防災組織との合同訓練や、防災マップを活用した災害リスクの理解促進など、地域と協働した防災教育に取り組むとともに、県立高校3校を実践モデル校に指定し、災害の歴史をたどるウオークラリーや高齢者宅での防災点検等の探究活動、文化祭と連動させた避難所のモデル設置や防災グッズ体験など、各校が工夫を凝らした取組を実施しながら、生徒の防災力の向上を図っております。今後とも、各校に適正配置した約3,000名の教職員防災士を中核として、学校総ぐるみで児童生徒の防災力向上に努めるとともに、大規模災害に備えた防災教育の充実に地域の力をお借りしながら継続的に取り組んでまいりたいと考えております。
3.中小企業の経営基盤の強化について
Q.現下の県内経済情勢をどう認識し、中小企業の経営基盤の強化をどのように支援していくのか。
A.中村時広 知事
最近の県内経済は、化学あるいは電気機械など、一部の業種における生産活動で弱い動きが見られるものの、個人消費は、エネルギー価格の高騰や円安等による物価上昇の影響を受けつつも徐々に回復し、また、設備投資も運輸や観光業を中心に増加するなど、全体としては緩やかに持ち直していると認識をしています。しかし、ゼロゼロ融資の返済の本格化や、長引く物価高による収益の圧迫、慢性的な人材不足など、県内企業を取り巻く環境は、全体的には依然として厳しい状況が続いています。県では、企業が経済情勢の変化や市場の競争に対応しながら持続的な発展を図るため、金融機関と連携したきめ細かな伴走支援を行っており、約7,000件の資金繰りをサポートしてきたほか、生産性向上・省コスト化につながる設備投資への助成や、デジタル技術の実装推進、営業本部を軸とした国内外への新たな販路拡大、リスキリングによる社内DX人材の育成・確保など、多角的な支援策を展開し、将来を見据えた中小企業の前向きな取組を中心に下支えをしているところでございます。さらに、今後も不透明な情勢が続くと考え、コスト削減による収益力向上に向けた省エネ設備の更新等への支援や、賃上げに資する国の業務改善助成金への上乗せ補助を行うため、必要経費を6月補正予算案に計上しているところであります。引き続き、県内中小企業がより競争力を持ち、安定した経営を続けられるよう、県内経済の動向を注視しつつ、関係団体等とも密に連携しながら、企業の経営基盤強化への取組を支援していきたいというふうに思います。
4.紙産業の振興について
Q.紙産業技術の研究成果はどうか。また、紙産業の振興に今後どのように取り組んでいくのか。
A.中村時広 知事
デジタル化の進展等により、紙製品の国内需要の縮小が避けられない中、本県ものづくり産業の基幹を担う紙産業の振興に向けては、カーボンニュートラルやSDGsなど、社会経済情勢の変化に対応しつつ、紙製品への新たな付加価値を創出することは不可欠であり、県紙産業技術センターを核として、大学や民間企業と連携しながら、新技術の研究開発に注力してきているところでございます。具体的には、紙くずやタオルくず等の産業廃棄物を活用し、機能的な再生紙を開発したほか、次世代の高機能素材として期待されるセルロースナノファイバー関連技術では、CNFを配合した抗菌段ボール資材や掃除用ウエットシート、新しい脱水技術を取り入れたCNFシート製造装置等の製品化に結びついたところであります。また、温暖化の影響により注目されている冷たくて蒸れない冷感紙の開発にも取り組んでおり、冷感性や吸水性が向上した試作に成功するなど、現在、製品化に向け研究を加速させているところであります。加えて、古紙の新たな用途開拓として、脱プラスチックに対応可能な代替製品開発に向けた研究を行うなど、従来の紙製品の枠を超えた新分野を目指す取組も進めており、今後とも、市場や企業ニーズを的確に捉えて、産学官による連携を一層強化し、全国に誇る紙産業の維持・発展と本県経済の活性化につながるよう、積極果敢に取り組んでまいりたいと思います。
5.県立高校の魅力向上について
Q.県立高校の魅力向上に向け、今後どのように取り組んでいくのか。
A.田所竜二 教育長
昨年3月に策定した県立学校振興計画は、県立高校等の魅力化を図りながら、質の高い学びを全県域で提供できる体制の構築を目指し、夢や進路の実現を目指す子供たちから第一の進学先として選ばれるよう、多彩で魅力的な選択肢の提供、職業・学科横断的学習の展開、進学指導の充実という3つの目標の実現に取り組んでおります。具体的には、理数情報科や国際科、ゲームクリエーションコースなど、新しい学科・コース等のカリキュラムづくりや環境整備、職業横断型人材育成のための学習モデル構築と教材開発、進学型総合学科など、地元高校から第1希望の大学等に進学できる指導体制の強化などに取り組んでおり、来春から始まる計画の具体化に向け、施設・設備の整備はもとより、準備委員会を軸に各校が教育内容のブラッシュアップを急ピッチで進めているところでございます。また、昨年度から全ての県立学校で実施しているソーシャルチャレンジ for High School 事業では、地域の企業や団体・大学等と連携し、地場産業の振興やにぎわい創出など、地域課題の解決に向けた実践的な活動を通して、生徒の地域への愛着や貢献意欲を喚起しており、今後は、ふるさと納税の活用など、先進事例も研究しながら、地域に愛され生徒に選ばれ続ける魅力ある学校づくりに、引き続き全力で取り組んでまいりたいと考えております。
6.特別支援学校における就労支援について
Q.特別支援学校における就労支援に今後どのように取り組んでいくのか。
A.田所竜二 教育長
障がいがある子供たちの自立と社会参加を促進するためには、就労支援の強化が極めて重要と認識しており、特別支援学校では、障がいの状態や発達段階に応じたキャリア教育を幼児段階から計画的に実践するとともに、企業や関係機関と緊密に連携し、個々の生徒の能力・適性に応じたきめ細かな就労支援を行っております。特に、清掃、接客、販売実務、情報の4部門で実施する県の技能検定は、国の障がい者雇用促進セミナーと同時開催することで、生徒の能力や意欲を企業関係者にアピールできており、昨年度の検定1級取得者の約8割は希望職種に就労するなど、着実に成果を上げているほか、東・中・南予に配置する就労支援コーディネーターを軸として、就労先の新規開拓やマッチング、職場定着に向けたフォローアップなど、切れ目のない支援にも努めております。また、ICT機器の授業活用を積極的に進める中で、ロボットの遠隔操作による接客業務や、在宅でのビジネス文書作成業務に挑戦する生徒も現れるなど、デジタル社会の進展が職業選択の幅を広げていく可能性を実感しており、今後とも、社会環境の変化に応じた効果的なキャリア教育を積極的に推進し、1人でも多くの生徒が希望する進路実現を果たせるよう、関係機関等とより連携を密にしながら、支援の充実を図ってまいりたいと考えております。
第385回(令和5年9月21日)定例会 一般質問
1.自治体間の広域支援体制の充実強化について
Q.県内市町間や近隣県との連携強化など、災害時の広域支援体制の充実強化にどう取り組んでいるのか。
A.中村時広 知事
大規模災害の発生直後、避難所運営や災害廃棄物処理、罹災証明発行等を被災自治体のみで対処するには限界があることから、迅速かつ適切に実施するため、県内市町間に加え、四国や中四国、全国レベルでの都道府県間の広域支援体制を構築し、災害発生時に相互応援をこれまでも行ってきたところ。西日本豪雨災害でも、南予4市町に対して、県内12市町、県外は9都県から延べ6千人を超える行政職員の応援を受け、災害応急対策や生活再建に尽力いただき、広域支援の重要性を認識。このため、その後の支援マニュアル等の見直しや研修会等によるスキルアップに加え、県総合防災訓練ではカウンターパート先である他県や市町に毎年参加いただき、共に実践を重ねるなど、広域支援の更なる実効性向上に努めている。また、災害マネジメント力を向上させるため、市町災害対策本部の支援や防災機関との調整等を行う支援員を、県・市町の防災担当者を中心に、これまで68名養成。昨年12月の雪害時には久万高原町に支援員を派遣し、町長等へ直接助言して、派遣部隊と自衛隊の活動箇所等を調整したことが除雪等の迅速化に繋がるなど効果を発揮している。今後とも激甚化する大規模災害に万全を期すため、訓練等を通じ自治体間の連携に努め、広域支援体制の充実強化に今後も取り組んで参りたい。
2.林業の支援について
Q.現在の県内のJ-クレジット取得事業者の状況と今後の見通しはどうか。また、J-クレジット取得に向けた取組みはどうか。
A.末永洋一 農林水産部長
森林管理により吸収されたCO2を認証し、販売するJクレジット制度は、SDGsの目標達成に貢献するもので、県内では、3つの森林組合と西予市で合計8,781トンがクレジット化され、うち2,106トンの販売収益が森林整備に活用されているほか、石油元売り会社と協定を締結した久万高原町では今後の取引が見込まれている。この制度は、森林吸収量を価値化して現場に還元できる反面、登録審査に多大な労力を要することが課題であったことから、国では認証対象期間や算定対象などの要件を緩和し制度の活用を促しており、全国的な需要の高まりと相まって取引の広がりが期待できると認識。このため県では、登録に必要な間伐等の施業履歴の把握や森林経営計画の策定を効率的に行うための航空レーザによる計測データの活用、森林組合等が行う森林整備への支援等を行ってきたほか、今年度から新たに、購入者とのマッチング支援や創出者の意欲を喚起するセミナーの開催にも取り組んでおり、今後とも、森林の機能を活用した森林整備のための資金獲得を促進し、持続可能な森林経営と林業の活性化につなげてまいりたい。
Q.林業従事者の確保にどのように取り組むのか。
A.中村時広 知事
林業従事者が減少傾向にある中で、森林の適切な管理と資源の循環利用を図り、災害防止や水源涵養など森林の持つ多面的機能を発揮させるためには、これまでに培われてきた林業従事者の優れた技術や経験を、将来に渡り継承できる担い手の確保・育成が喫緊の課題である。このため県では、高校生等の体験研修や就業相談会の開催をはじめ、就業給付金の支給や林業研究センターでの各種技術研修を実施し、新規就業とその定着を図るとともに、作業の効率化や労働負荷の軽減等を図るため、高性能機械や安全装備等の導入を支援するほか、今年度から、急速な進化が続くデジタル技術を活用したスマート林業を実践できる人材の育成にも着手したところ。また、林業のすばらしい魅力を理解いただくため、「えひめ愛顔の農林水産人」や林業女子会「林凜ガール」の活躍を広く情報発信するとともに、外国人材活用のための制度改正を国に提案するなど、林業のイメージアップや多様な人材の確保にも取り組んでおり、今後とも関係団体や林業事業体と連携しながら、就業意欲の醸成と定着に至るまでの研修などを通して林業従事者の確保・育成に努め、持続可能な林業の実現につなげてまいりたい。
3.活力ある地域づくりについて
Q.活力ある地域づくりに向けて、地域活動を行うNPO法人の活性化にどのように取り組んでいるのか。
A.池田貴子 県民環境部長
人口減少や少子高齢化など社会構造の変化等による地域活力の低下が危惧される中、NPO法人は、多様化する社会ニーズに応えることが期待され、県内では8月末現在510法人が福祉や防災、教育など様々な分野で主体的に活動しており、個性ある地域づくりや地域課題解決の担い手として重要な存在であると考えている。このため、県では、魅力ある地域の基盤づくり等のため、地域課題解決を担うNPO法人の確保を掲げ、これまで、設立・運営相談や助言・指導、愛媛ボランティアネットを活用した制度の普及啓発などのほか、あったか愛媛NPO応援基金を活用した助成事業や運営能力向上のための研修会の開催等により、育成・支援の両面から法人活動の活性化に取り組んできたところ。今年度も、NPO法人が地縁団体や地元自治体と協働して移住者獲得を目指す取組みや歴史・文化の伝承活動など、地域に根差した活動を支援するとともに、来月には、団体相互で連携・協力するネットワークづくりの推進を図るセミナーを開催することとしており、引き続き、NPO法人の一層の活性化を図り、多様な主体が協働した活力ある地域づくりに取り組んでまいりたい。
4.高校の魅力向上について
Q.小中学校でICT教育を受け、知識や技能が高まった子どもたちの進学先についてどう考え、どう取り組んでいくのか。
A.教育長
県教委では、令和2年度に小学校から高校までを見通したICT教育3か年計画を策定し、児童生徒の発達段階に応じた情報教育を計画的に実施しており、高校段階では、今年度から全ての県立高校等でプログラミング学習アプリを試験導入し学習レベルの底上げを図るほか、プログラミングのスキルアップを目的としたサマースクールやコンテスト等を開催するなど、より高度な学習内容を希求する生徒への取組みも拡充している。また、本年3月に策定した県立学校振興計画においては、理数情報科や情報マネジメント系列など、情報教育に重点を置いた学科等を東中南予に各2校ずつ設置することとし、より高度な情報教育を希望する生徒が、地域内の高校で学びながら第一希望の進路実現が可能となるような体制づくりも進めており、県のDX実行プランに呼応してデジタル人材の育成に取り組む県内の大学や企業との連携を強化しながら、情報関連分野への進学・就職を目指すカリキュラム等の検討を進めている。県教委では現在、第2期3か年計画の策定を進めており、引き続き小中高各段階での情報教育の連関を重視しながら、一貫性のある教育実践に取り組んで参りたい。